ローカル

アイデアは、
遊び心が
運んでくれるさ。

株式会社ピーベス

代表取締役 原 辰徳

THEME「価値」

 「こんなところに、こんな会社があるなんて誰も思わないでしょうね」。岡山駅から高速道路を使って小一時間かかる真庭市の北房。田園風景の一角に社屋を構えるピーベスは、国内外の各業界の大手メーカーを相手に多くの取引を行う塗装機械設備会社。その強みは、価値の生み出し方だ。25年前に創業して会社を率いる原は「この田舎でも創意工夫はできる。薄利多売で価格競争をするのではなく、差別化された商品をじっくりと作っていく」。〝アイデア集団〟のリーダーは、そうきっぱりと言い切る。

 大阪の粉体機器メーカーで働いたのち、長男としての定めもあって地元にUターン。地元の企業に勤めたのち、塗装の知識とその発想力で起業すると、その才覚は発揮される。「大阪で営業をしていたとき、私が提案した方式を採用され、自分のアイデアが評価されてお客さんに貢献できる。それは大きなモチベーションだった」。アイデアを形にする。それこそ、原の武器だった。驚くエピソードがある。原は枕元にノートを置いて寝るのが習慣で、若い頃は寝ていると頭の中でアイデアが生まれて設計ができてしまっていたのだとか。今も「300くらいはノートにあるかもしれない」と話すほど、ネタが尽きることがない。

 どこからアイデアが来ているのかー。「子供の頃の遊びからじゃないかな。石を投げたり、魚を取ったり、隠れ家を作ったり。どうやったらいいかを自分で考えるじゃないですか。小学校の夏休みに『発明工夫』という課題があった。そこで入賞したりね」。誰しも昔の田舎で育った者なら通った道だ。それをビジネスの場面でそこまで生かせる人間がどれほどいるだろうか。原はこう続ける。「プラモデルを組み立てる側と、プラモデルを考えて作らせる側は違う」

 アイデアを出すだけではない。「これも、それも、自分で作った」と工場を案内してくれる原が教えてくれたのは、機械設備はもちろん、道路の側溝蓋、工場自体もだった。考えて、作ってしまうのがこの人のすごいところだろう。塗装を主とする仕事だが「塗装といっても、洗浄→乾燥→運搬→塗装→加熱といろんなことをやる」と言い、アイデアに経験や実績が伴ってくると具体的な機械や構造の理解も進み、それがまた新たなアイデアにつながるのだという。「遊ぶようにこうやったらいいんじゃないかと考える。点と点が線になってきて、その組み合わせの連続」と語る。

 原は会社の未来図について「少子高齢化がもっと進む中、この場所で少数省エネで、1社で完結する企業にしたい」という。そのために大事にしていることがある。「私自身も、社員も、自発的にアイデアを出し合える環境がないといけない。アイデアのキャッチボールが一番重要」と話す。ピーベスがピーベスであること。つまり、そこに遊び心があることで、他にはないオリジナリティが生まれてくる。
 「技術や工業でなく、図工や工作。それが好きな人がいい。描かれたプランをやる、言われたことを実現するのは、我々がここ(真庭)でやることではない」。今や取引先の半数は海外だ。〝遊び心〟という圧倒的な強みが、ピーベスを真庭にいて、真庭の枠にとどめない。

株式会社ピーベス webサイト