福祉からはじまる、
おもしろいまちづくり。

池田商店
保育士/栄養士/特別支援教育士 長綱かほり
幸せとは、なんだろう。その答えは一つではないが、自分がやりたいことをやれること、その環境があることは大切な要素かもしれない。池田商店は「福祉が町をオモシロク!」を合言葉に、そんなまちづくりを目指している。
「もともと栄養士として児童養護施設で働いていて、障がいの分野に関わるようになりました。そこで、知ったのが支援施設を卒業した子が社会に出る際、こういう仕事に就きたいという理由でなく、ここの定員が空いているから行く、という選択肢しかないという事実でした。だったら自分たちで作ろうよって立ち上げました」
3年前に池田商店を立ち上げた長綱かほりさん。就労継続支援B型事業所「ジーニー」を開くと、マーケティングを専門とする夫・茂雄さんと協力しながら、障がいのある人たちが自分らしく働ける場所を作ってきた。 「支援学校でもパソコンやタブレットを使うことには慣れていて、そういうスキルや興味を仕事につなげられるんじゃないかと思いました。一般的にB型事業所というと、内職のような軽作業の仕事が多く、デザイン関係やクリエイティブな仕事は、当時の岡山県北では珍しかったと思います」
まず書籍などのネットオークション事業を始め、そこからデザイン関連の仕事も増加。パンフレット、名刺、イベントチラシ、ラジオ編集、動画編集、HP制作、インスタ運営…と多岐にわたる。ガチャガチャのアイテム制作も人気で、地域のお店や企業、団体の缶バッチやシールといったオリジナルグッズを作っている。
「デザインの仕事にも、イラストを描く人、レイアウトを作る人、文章を入力する人、写真を撮る人、など細分化される。障がいの種類や程度、その人によってできることや得意なことは違うので、工程ごとに割り振って仕事をしています」
みんなが同じではなく、自分に合った仕事をする。歩合制だから稼ぎたい人はたくさん働くし、仕事よりも居場所として通う人はここでゆっくり過ごす人もいる。そんな風に個性を尊重する池田商店では、利用者さんのことを「タレント」と呼び、スタッフは彼らの魅力や才能を引き出すマネージャーだという。そんな社風に惹かれ、今では20人の利用者が在籍。市内だけでなく近隣地域からも集まるようになった。
「遠くからも人が来てくれるようになり、その人たちが住めるグループホームを作ったんです。そうやって成人に向けた事業をいろいろしていたんですが、やっぱり子ども時代にどういう環境で育つかが大事だと思い、子ども向けの事業を始めることになりました」
保育園年齢を対象にした児童発達支援と、小学生以上の放課後等デイサービスには10人が通う。B型事業所が終わる午後3時になると、今度は子どもたちがやってきて、事業所内にはにぎやかな声が広がっていた。利用者が増えるたびに、やりたいことはどんどん増えた。利用者さんたちの収入をつくるべく仕事を作っていくことにも力をいれ、現在は飲食店を2店舗も経営している。 「創業して3年で、いろんなことを始めることになりました。こんな予定じゃなかった(笑)。でも、ここに来てくれている人のことを考えたら、あれも、これもと増えてきた。やってみたら、それは健常者の人たちも必要とすることだったりする。福祉をきっかけに、社会全体が良くなる取り組みができると実感しています」
なんでも挑戦してみるのが、池田商店の流儀。今年の夏は、ぶどう農家の人が今年の生産ができなくなったので助けてほしいと声がかかり、ぶどう作りに挑んだ。「みんなで協力し、120房を収穫した」と笑顔を見せる。
「これはできないかなと思うこともあるけど、それをおもしろいと思う利用者さんもいるかもしれない。それぞれタイプがあるので、一つのことをずっとやりたい人もいれば、気分によって日替わりで違うことをやりたい人もいる。だから、『まぁ、やってみるか』ってなるけど、いつもスタッフ間で『うちは何屋でしょうね』という話になるんです」
そんな姿勢が、福祉っぽくない、とよく言われるが、それが池田商店らしさなのかもしれない。
「障がいを持つ人は、国内に一千万人と言われている。うちの取り組みが、福祉の枠を超えていろんな分野の架け橋になっていけばいいなと思いますし、それをおもしろいと思ってくれてつながってくれる人を増やしていきたいです」(茂雄さん) その人が、その人らしく生きられる。社会をもっとおもしろく。そのために、枠や境界線なんてものは、飛び越えてゆけばいい。








