ベンチャー

ママたちが
自分らしく
いられる場所。

Maman

代表 池永京子

THEME「居場所」

 「昔から黙っていると怖がられるので、喋っていこうと思ったんです。せっかくならその方が人に楽しんでもらえ、喜んでもらえるかもしれないし。あまりに喋るから、子どもの参観日に“今日くらいは静かにしとこう”と思っていたら、後で『体調でも悪かったの?』と心配されるくらいでした(笑)」取材中も笑いが絶えず、その中に人生の教訓が随所に散りばめられた時間だった。 10年前、子育て世代の母親たちが集まって交流を深める場として「Maman」を設立。地域の特産品を使った加工品の販売などを行いながら、ママたちが“自分らしくいられる居場所”や“やりたいことに挑戦する機会”を生み出している。 皆、ここに集まる理由が池永さんと話すと自然とわかる気がした。

 「きっかけは、JA女性部の若い世代の部門を立ち上げてくれないかと言われたことでした。ちょうどママ友と集まれる場所が欲しかったこともあり、料理教室や陶芸教室などみんなで楽しめることができたらいいなと“ノリ”で決めたんです」
 農家でもJA関係者でもなかった池永さんだが、女性部に入会し、JAママ会の代表として月に一度の活動を続けていた。その後、事業部Mamanを立ち上げた頃、地域から「何か土産物になるようなものを作れない?」と打診された。 「無茶振りだなぁと思いましたよ(笑)。ただ、アルバイト先のぶどう農家さんで色付きや形の悪い規格外のぶどうを廃棄されているのを見て、もったいないなと。これをなんとかできんかなぁと思っていたんです」

 そう思うや否や、すぐに行動。家で加工の研究を始め、現在の主力商品であるピオーネシロップ「ほたるの雫」が生まれた。「一生懸命作っている農家さんに『いらないぶどうないですか?』と聞くのは失礼だと思っていたんですが、今では『買ってもらえない?』と声をかけてもらうようになりました」 年間で大瓶を50本、小瓶を500本ほど出荷していて、ピオーネを使ったジャムやジュレも手がけてきた。 明るく、頼りになる人柄で、入会から数年後にはJA女性部の全国代表を務め、各地の農家と意気投合。岡山県産のものにとどまらず、そういうつながりから宮崎名産マンゴーの加工品を仕入れて販売してみたり、メンバー内にハンドメイドが得意な人がいたら買取をして販売し、思いついたことはなんでも挑戦してきた。 Mamanは、事業の枠を超えた温かなコミュニティでもある。 「独立した今は、子育て中のお母さんたちが10人くらい働きに来てくれているし、退職後に手伝ってくれる人もいます。社会の中で“〇〇さんの奥さん”や“〇〇くんのお母さん”と呼ばれるようになるけど、ここでは“個人”として頼られる。それが嬉しいと言ってくれるんです。お昼ご飯だけでも食べに来る人もいますよ」

 Mamanでも子育てでも、池永さんが大切にしているのは、その人が「自分の人生を楽しむこと」を応援すること。「私自身、厳しい親に育てられて“お姉ちゃんだからこうしなさい”と言われてきたので、一人の人としてちゃんと見てあげたいと思うんです。人には向き不向きや好き嫌いがある。 この人はこれが得意だからこれをしてもらおう、そうやってそれぞれを認めていきたい。子どもにもアドバイスはするけど、やるかやらないかは自分で決めなさいって。とにかく“人生楽しめ”って言います」情に厚く、メンバーへの愛情も深い。ある日の休憩中に、一人のメンバーが「仕事があったら、ここ一本で働きたいなぁ」と呟いた。その言葉に背中を押され、地域の空き店舗に食堂をオープンすることを決意。「借金は嫌いだし、3回くらい断ったんですよ(笑)。でも、最後はうちのメンバーたちの仕事になるかもしれないと思ってね」 「立ち上げの時には、いろいろ周りからも言われ、悔し涙も流しました。でも、少しずつ積み重ねてきました。最終的な目標はあるけど、まずは目の前にある状況でできることを一生懸命やる。それが大事だと思っています」 趣味は「特にないかなぁ」と言う。それだけ、Mamanの活動が楽しいから。今後は「全国各地の仲間たちにも会いに行きたいし、自分が良いと思う商品を集めた店もやってみたい」と池永さん。夢も、そのパワーも、尽きることはない。