ローカル

手のひらサイズの
テクノロジーを、
進化させていく。

株式会社藤岡エンジニアリング

代表取締役社長 藤岡 譲

THEME「テクノロジー」

 のどかな山あいに、軽金属の未来を担う工場がある。金型製作・成形から組立という一から十まで、一貫した軽金属の製造技術は全国で有数だ。「金属加工であれば様々な事ができるし、特にマグネシウムには特化してきた」。そう話すのは藤岡エンジニアリングを3年前に継いだ藤岡。静かな語り口だが、確かに、育んできた技術への自信がうかがえる。

 1946年に大阪で創業し、1976年に真庭市に工場を設置。金型を作っていた藤岡製作所と、74年からカメラボディなど精密機械加工を行う岡山ミノルタ精密は、2012年に合併し、15年に藤岡エンジニアリングに社名変更した。両者の技術が合わさり、金型製作→成形・鋳造→機械加工→組立まで、一つの生産ラインを1社でできるのが強みで「お互いの技術力が合わさり、それぞれの実力が上がっている」。主とするマグネシウムの射出成形ができる会社は全国でも10社に満たず、岡山では同社だけだ。

 1998年ごろは携帯電話の普及で、工場は多忙を極めた。月産で数十万台を生産。現在は社員160人前後だが、当時は180人の正社員とは別に派遣社員が200人いたという。〝ケータイバブル〟は5年くらい続いたが、その波が落ち着いてからも業績が落ちなかったのにも理由がある。「うちはやっていることは特化しているけど、ターゲットとする業界は特化していない」。生産分野の比率を見ても、レジャー用品、自動車、自転車、農機具、カメラ…と幅広い。長年ミノルタのカメラボディの精密機械加工をしてきただけに、高精度の技術がそれを可能にしている。

 競争を生き残ってきた理由は、もう一つ。誠実さが滲み出る藤岡だが、それはまさに社風を体現している。「とにかく真面目。よそから見たら過剰かと思うかもしれないけど、常に高品質を保ってきた。そこまでやらなくてもいいけど、そこまでやって出荷する。多少損をしても信用を取った方が長続きする」。そのミノルタ式のやり方が浸透し、ものづくりの姿勢が根付いている。

 「それでも、世の中に求められることをしないと生き残ることができない」と藤岡。信頼の継続は、新たな技術開発にもかかってくる。軽さが武器のマグネシウムは、電気自動車や低燃費車が増える自動車業界も注目しているが、強度の向上などさらなる改善点はある。そういった時代のニーズに合わせて性能を上げていくなど、創意工夫が求められる時代になった。

 そのためには、人材が必要だ。毎年5人ほどを採用し、中途採用にも応えている。「技術部門でも都会でくすぶっている人がいれば来てもらいたい。ものづくりが好きで、真面目な人がいい。未経験であっても0から社内で育てていきたい」。採用は地元出身者も多く、地元との繋がりも大事にしているだけに、社名変更後の認知もさらに広げたいという。

 「信頼を損なわず、チャレンジをしていく」。舵取り役の藤岡はそう言い切った。石橋を叩きながらも、勇気を持った前進をー。手のひらサイズのテクノロジーは未来へと、少しずつ進化する。

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