ローカル

可能性があるなら、
やってみるさ。

東真産業株式会社

代表取締役社長 小出 総太郎

THEME「流儀」

 「創業者から受け継いできたものを一言で言ったら、それは挑戦の歴史だったんだろうと思う。いろんな面で厳しくなっている時代。でも、そこだけはブレてはいけない」。柔らかい物腰で社員からも慕われる社長の小出の言葉が力強くなった。創業62年。町のエネルギー供給から車両関連、果樹園経営まで幅広い事業を展開する東真産業には、「やってみよう」という姿勢が、脈々と受け継がれている。

 町に乗用車が2台しかなかった1957年、ガソリンスタンド経営から会社がスタートした。「中鉄バスの給油をしていた出光が契約が切れて、誰かがやる必要があった」ところに、元湯原町役場の職員だった創業者が名乗りを上げた。そこから自動車整備、保険代理店、レンタカー、環境事業、LPガス…。現在では40を超える店舗や工場を構える、多種多様なサービスで年間80億の売り上げを誇るグループに成長。社員180人、アルバイトも含めると350人もの雇用を地域に生んでいる。

 事業の多展開は、生き残るための手段でもあった。売り上げの主はガソリンスタンド。「どこも同じかもしれないが、この地域も人口減少していくのは目に見えており、ガソリンの需要も減る。ましてや車の技術も進歩し、外部環境は厳しい。油の比率は下げていこうとずっとやってきた」と小出。昔は売り上げ全体の80%以上を占めていたが、他事業を伸ばし、65%に減らした。

 利益を上げるためだけでなく、時には地域の必要に迫られて判断する形もある。担い手不足が問題となっていたぶどう園の経営を5年前に開始。「どんどん歳をとって辞める人が多くて、うちにやってくれないか?という声が出始めた。農業を利益に繋げるのは大変と知りながら始めた」と笑う。収穫時期などのピーク時はガスやレンタカーの部署から応援に駆けつけるといい、和気藹々とした社風を感じる光景が広がっている。農園の話をする小出自身もどこか楽しげで「初年度の収穫の感激は今も忘れられない」と自然と笑顔がこぼれる。

 ただ、そこはビジネスの枠組みから外れてはいない。「利益優先で始めたわけじゃないが、我々も生きていかないといけない。出血ばかりではいけない。チャンスがあって実現の可能性あるならやる。能力を超えるものは無理だと判断することも当然ある」と、経営者の鋭い目だ。

 60年、地域の暮らしに寄り添ってきた自負はあるが、それに甘えるつもりは一切ない。それどころか、厳しく自社を見つめる。「若い社員はこれからを心配しているかもしれないが、社員に希望を託したい」。若さや外の視点も取り入れようと、4月から創業者の孫にあたる廣岡宣行が東京からUターン。統括本部で会社のブランディングやデジタルマーケティングに力を入れ始めている。

 未来は自分たちで作っていく。「これまで、いろいろなことをやってきて、当然失敗もあったんだろうと思う。でも、それでも『やってみよう』というのがあったから今がある」。その流儀が、小出に前を向かせる。

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